我家のヒーロー、雅斗へ

 雅斗しばらくね。そちらでは楽しくやってる? 我家からヒーローがいなくなって、もう13年になるんだね。
 でもね、風が吹いて木の葉が舞えばその葉音に、雨が降れば傘の上に落ちる雨音に、太陽がギラギラ照りつければそのまばゆい光の中に、雅斗を感じることができるんだよ。
 入院していた時、お世話になった看護士さんから「雅斗君は、どんな時にも近くにいますよ」って言われたけれど、その言葉通りに感じている。
 また、「雅斗君は天使になって……。」とも言われたけど、本当にそうだと思うよ。

 雅斗は12才の時、原因不明で治療法が確立していない難病に侵され、4年間本当によく頑張った。一言では言えないくらい、つらくて痛い思いを必死で頑張った。
 弟の骨髄を移植した時に、感想を聞いたら「うまい!!」と言って、笑わせてくれたね。今思い出しても笑ってしまうよ。でもその後の、地獄のような無菌室での治療は、ハンパじゃあなかったよね。
 けれど、我家のヒーローはここでも負けなかった。カッコ良かったよ。金メダルものでした。雅斗も母さんも、妹や弟達も、当たり前のように、元気になる! と信じていたんだけど、再発はキツかったね。
 でもそんな時でも、母さんは雅斗がいなくなるなんて、ちっとも思っていなかったよ。雅斗だってそうだよね。ヒーローがいなくなるなんて、誰も思わないよね。

 雅斗、いいお知らせとお願いがあります。真弓が9月28日に、結婚式を挙げることになったんだよ。あの、兄ちゃん大好きっ娘(こ)の真弓が、秋には花嫁さんになるの。
 お相手の方は、雅斗とは同い年で、雅斗のように優しい人。そこでね、雅斗にお願いがあるんです。花嫁の真弓に、祝福のメッセージを贈ってあげてほしいの。雅斗らしいメッセージをお願いね。
 雅斗が20才になったら、一緒にお酒を飲もうと楽しみにしていたけど、それができないのはつらいし淋しいよ。たまには大きな声を出して泣かせてね。そしたらまた、元気出るからね。今は、雅斗と住む所は違うけれど、いつかそばに行くから、それまでは風や雨や光と一緒に、母さんや妹や弟達の近くにいて、笑っていてね。
 雅斗、母さんのところに生まれて来てくれて、ありがとう、大好きだよ。
 フフッ…ちょっと恥かしいね。雅斗は命に変えて、母さん達にとっても大事なことをいっぱい伝えてくれた。母さん、雅斗を越えることはできないけど、雅斗に恥ない生き方をするよ。見ていてね。

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