いつもそばで

 お母さん、元気でやっていますか?
 あれから4年半、一度も会いに来てくれないけど、どうしてる? そっちでも、読書会を開いたり、日本語の先生したり、忙しく活躍してるのかな?
 ま、会ってはいないけど、家族みんな元気だし、子ども達は病気といっても風邪くらいの健康優良児だから、近くで守ってくれてる気はしてるけど。
 だから、見ててくれたかなぁ? この4年半のこと。
 いつも私に自信をくれたお母さんがいなくなって、色々大変だったんだよ。

 あの時、私はまだ主婦として半人前で、すぐに佐和子が生まれてきたけど、ちゃんと育てられるのか、ただただ不安で、目の前にある命が怖かった。お母さんをお手本に頑張ってみたけど、同じようにはできなくて、そんな自分が情けなくて焦って苛立って、一番大切な家族に八つ当たりして傷つけて。
 苦しかった。
 でもね、そんな日々を経験して、最近ようやくわかったんだ。
 たくさんの人に助けられ、無我夢中で頑張って、結局お母さんみたいにはできなかったけど。
 〝それでもここまでなんとかなってるじゃん〟 って。この4年半で、私は母になり、頼りないお母さんだったけど、佐和子も智恵子も元気なおてんば娘に育ってる。私の料理でみんな健康だし、家も新築した。
 上出来だよね。
 そう思ったら、体からスーッと力が抜けて、「私流(わたしりゅう)でも大丈夫かも」って少し自信が持てるようになったんだ。

 それに、遠くへ行っちゃったと思ってたお母さんが、実は
 〝私の中に入ってる〟 ってこともわかった。お母さんって、おしゃべりで、出かけたら立ち話ばかりで帰ってこないし、整理下手だし、感情的だし、面白そうな事はなんでもやりたがるとこあったでしょ?
 それ、私も同じだったんだ。
 なんか、それが嬉しくてねぇ。会えない寂しさが、少し和らいだ気がしたんだ。
 だから、もう大丈夫。

 あの年の夏、家で迎えた最後の結婚記念日。朦朧とする意識の中、私の結婚式のためにと、お父さんに初めて買ってもらったエメラルドの指輪をはめ、誇らしげにかかげて、
 「嬉しかったぁ。お父さん、日本一やわ。いや、世界一やなぁ」 と言った時の、柔らかい幸せそうなお母さんの笑顔。
 私もいつか、あんな笑顔になれるよう、私は私なりのやり方で、大切な家族を愛していくね。お母さんがそうしてくれたように。
 だから、これからもずっと見守っていてください。そして、たまには私の夢に出てきて、笑顔で褒めてほしいな。
 また会えるよね。それまで元気でいてね。

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