Dear my friend Lucky

 お元気ですか?
 あなたがいなくなってから五年の月日が流れました。
 ある日我が家にやって来たあなたは、自転車のかごに乗るほどの、ちっちゃくて、くりくりした目をした好奇心いっぱいの子犬でした。
 生後母親に誤って踏まれ、上がらなくなったしっぽも何のその、全身でうれしい、楽しいと飛び跳ねていましたね。
 あなたは私の顔を見ては散歩をせがみ、私はいつも根負けし、二人でよく長い散歩をしましたね。
 幼い頃大きな犬に吠えられ、犬が苦手だった私だけど、いつのまにか恐怖心が薄らいで消えたのは確かにあなたのお蔭でした。

 そしてあなたは大きく成長し、小さな子供たちや子犬によくなつかれて遊びに来てもらっていましたね。
 だけど自分より大きい犬に吠えられたり、けんかをしかけられると、決してひるまず立ち向かいました。その度にいつも冷や冷やさせられたけど、そんなところも大好きでしたよ。
 私が失恋したとき、失業したとき、よく二人で長い散歩をしましたね。
 潮風に吹かれながら、春の海沿いの道を、雨上がりの桜の絨毯の上を歩いたり、一面に咲いた菜の花畑をかけ回ったりしましたね。

 私が落ちこんであなたの傍でしゃがんでいると、あなたは全て知っているかのように、静かに座って一緒にいてくれました。

 五年前のあの夏――
 あなたはだんだんと食べなくなり、吐くようになりました。
 そしていつの日か歩けなくなり、あんなに好きだった散歩もできなくなりました。

 病院を訪れた私の目をじっと見て、檻の向こうのあなたは、もう立てないはずの足を何度も滑らせてはもがきながら、立ち上がろうとしてくれました。
 私はただ泣くことしかできませんでした。

 少しでも元気になって、もっと生きてほしかった。
 でもあのとき言ってあげるべきでした。
 もういいよ、そんなにがんばらなくていいよ、もう楽になっていいんだよ、と。

 数日してあなたは息を引き取りました。

 あなたのいなくなったがらんとした空間を目にする度に、私は自分を責めました。
 私の不規則な仕事のせいで、あなたをいつも待たせてしまったこと。
 そんな一つ一つがあなたの体を蝕んで、もっと生きられるはずの命を縮めてしまったのではないかと。

 そして私は自分に問いかけました。
 あなたに無理をさせた上にたくさん寂しい思いをさせたのではないか、なぜもっと一緒にいてあげられなかったんだろう、なぜもっといろんな場所へ連れて行ってあげられなかったんだろう、と。
 あなたは幸せでしたか? うちに来て本当に幸せでしたか?
 今となっては知る由もないけれど――

 ただ一つ言えるのは、私は確かに幸せだったということです。
 あなたと一緒にいられて、私は本当に幸せでしたよ。

 らっちゃん、今どうしていますか?
 今でも天国の菜の花畑を走っていますか? 新しい友だちはもうできましたか?
 どうか幸せでいてください。
 私も前を向いて歩いていきます。

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