母に送る千の質問

 「お母さーん!」時々、空に向かって呼んでいる私の声、聞こえているかな。
 私、もう32歳。だけど、いまだにお母さんに泣き言を聞いて欲しくて心の中で母を呼ぶ。お母さんに聞きたいことがまだまだたくさんあって、その質問を誰にしていいか分からなくて泣けてくる。2年前に出産して、私も母親になったよ。かわいい孫がいるんだよ。おばあちゃんになった母さんは、どんな風に、わたしの息子に声をかけているのかな。
 母を22歳のときにガンで亡くしてから今年で10年になる。苦しかった闘病生活、こんなに辛そうな母を見るくらいなら、いっそ楽な世界へ送り出してあげたかった。だから辛いまま、生きて病気と闘ってほしいとは思わなかった。ただ、元気なうちに、もっと母さんに優しくしたかった。いろんな話を聞いて、たくさん料理も教えてもらっておけばよかったと思う。十分たくさんのことを母から教わったけれど、歳を重ねるたびに、やっぱり母を必要としてしまう。今、一番教えてもらいたいのは子育てで、自分が母親になってからは、また一層、母さんの存在の大きさを強く感じる。
 私は、子どものころ、どんな食べ物が好きだった? どんなことをして遊んでいた? 何の絵本が好きだった? 幼稚園に行きだして、1ヶ月泣いて私がお母さんから離れなかったって話は本当? お母さんどんなことに困った? どんな風に育てたら、こんな私になるの? ねぇ、教えて。
 年子の出来のいい頑張り屋の姉と比べられることは、ほとんどなかった。「あなたは、お勉強が苦手だけど、心の優しい子よ」といつも言ってくれた母。「これからの時代、女性も社会に出ていかなくちゃ」といつも言っていた母。だから何度試験に落ちても、あきらめずに教員採用試験を受け続けた。苦手な勉強も大人になって、初めて本気でやった。そして今、学校で毎日子どもたちと一緒に学び過ごすことが出来ている。
 お母さん、仕事は楽しいよ。義理のお母さんもとってもいい人で、優しくしてもらっているよ。最近、厄除けのネックレスを買ってもらったよ。本当の娘みたいに、大事にしてもらってる。19歳の時には、お母さんに、ネックレスをもらったよね。2人のお母さんにもらった宝物、大切にするからね。九州のお婆ちゃんは、今一人暮らしをしていて、「夜は一人で寂しい」って言っているから夢の中からでも声をかけてあげてくれないかな? 私も、お母さんの代わりになれるように時々、電話をしているよ。「あなたは、お母さんに似てるわね」ってお婆ちゃんに言われたらすごくうれしいんだ。いつだって私の自慢は、綺麗なお母さん、あなただから。お父さんは今年で定年退職するんだって。大丈夫かな。お父さんと一緒に、今年建てた我が家に遊びに来て欲しかったな。父さんも母さんとの老後を夢見ていたはずだけど、今では、すっかり自分で掃除洗濯まで出来るようになったよ。
 私、お母さんが生きていたらやりたかったこと、子どもに託していた思いを実現していくから応援してね。目の前にいる生徒たちに、「あなたは優しい子だから大丈夫」って優しく包んであげられるような先生になりたいと思ってる。この声がお母さんに届くといいな! お母さん、いつもありがとう!

次の作品へ