枯れない花

今年も春がやってきました。お母さんの好きだった季節です。あの春から、もう幾度季節は巡ったのでしょうか。

素直でない僕は、「ありがとう」や「ごめんなさい」が言えない子どもでした。中学生になってからは、反抗期もあってあなたと話すことがほとんどありませんでしたね。それでも、あなたはいつでも僕の味方をしてくれました。県外の大学を受けたいと言った時の、とても寂しそうな顔が忘れられません。それでも、僕が大学に合格した時に一番喜んでくれたのはあなたでした。

僕が地元で過ごすのもあと数日、という時にあなたは花束をプレゼントしてくれました。カトレアという花で、僕の誕生花だということをずっと後に知りました。うれしかったのに、僕は「花なんて……」とそっぽを向きましたね。本当は「ありがとう」と感謝を伝えたかったのに。僕はいつでも言えるから大丈夫、と思っていました。

 子どもだった僕も、たくさんのことを経験しました。やっと自然に「ありがとう」が言えるようになってきたのに、あなたは遠い場所に行ってしまいましたね。一番言いたかった相手に、もう言えない。そんな思いがあるからか、僕は毎日できるだけたくさんの人に「ありがとう」を言うようにしています。

あなたからもらったカトレアの花は、今も僕の心の中に咲き続けています。その花には、いろんな風が吹きます。冷たい風が吹くこともあるけれど、元気に咲き続けています。穏やかな風が吹いた時、あなたがそっと息を吹きかけている気がするんです。微笑みながら。そんな時、僕はいつもこう言います。「お母さん、ありがとう」と。

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